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地価まとめ

11.土地の時価 付記

@青山一丁目交差点(地下鉄青山一丁目駅辺)

以上、諸法制、税制、会計基準等との関わりの中で、土地の時価がいかに扱われているか概観した。原理原則としての時価は理想的な市場において形成される。多めの売り手と買い手の間で一致する唯一の価格というものである。しかしながら、土地に関してはこの様な市場は存在せず、もしあるとすればかくあるべきという評価者の意見表明によらざるを得ない。いかにこの意見ができるだけ客観的に形成される様、保証し、担保しようとするものが不動産鑑定基準である。この基準に従って評価した時価として公表されるものが公示価格(都道府県の基準地価格を含む)である。ただ、この公示価格は現在の所、限定的な地点にしか選定されていないため、その評価地点の周辺地域の地価の傾向を表示するに止まっている。

この公示価格を含め、土地の時価とは適正なその時の時価であり、不動産の鑑定評価により求められる価格である。このことが大原則であり、民法、会社法、等の法制、あるいは会計基準等の基本となっている、また、法人税法、所得税法、消費税法等の基本税法における土地の時価もこの鑑定評価額によることは論をまたない。この様にして適正鑑定評価額一本で完結すればまことに明快であるが、制度的な面ではこれに依り難いものがある。

その第一は、相続税法における路線価である。相続した土地に課税するので全国的に全部の土地に価格を付けなければならない。これに達するため、路線価を付けて課税価格を算定できる様にしたものである。この路線価は現在、適正な時価の80%相当とされている。

その第二は固定資産評価額である。これも所有する土地に課税するので全国全部の土地に価格を付けなければならない。そこで、3年に一回の評価替え(価格付け)として全国的な評価基準により行う。この評価額は現在、適正な時価の70%相当とされている。この固定資産税評価基準によっているものは固定資産税の外に不動産取得税、登録免許税の土地の評価がある。

以上、路線価と固定資産税評価額は、税制独自の要求により設定された制度的な一定の価格であり、土地の時価を求める、いわゆる適正な時価とは関わりがない。

この小稿は、土地の一物四価(?)への疑問から出発した。今、ここまで来て四つのうち路線価と固定資産税評価額の二つが除外され残るは公示価格と基準地価格の二つとなった。しかしながらこの二つは地点が異なるだけで、同じ地価公示法、評価基準に基づくものであり、正に不動産鑑定評価による時価であるから、一つのものである。一物はやはり一価であった。

ここで一段落、納得するのだが、完全にすっきりした訳ではない。良く考えてみると土地の本当の市場価格は時々刻々把握できるのか?という問につき当る。様式と違ってそうした市場が存在しないのが土地なのだから、従って鑑定評価はそうした市場の存在を想定した意見の表明なのであると。これが人為の限界、納得はしたが、“青い鳥”には又も遠くの空へと飛び去られた様な。


(以上)