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相続と時価.1

8.相続と時価

土地の時価とその変動は

  • 直ちに相続財産価値の多寡、すなわち遺産の大小、と
  • 財産価値に課税する相続税の多寡とに直結する。

そのため、この時価の算定は相続問題の最重要ポイントとなる。
相続税法における土地の時価は、「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価格」とされており、これは不動産鑑定評価基準でいう正常価格概念と同一の概念とされている。この上位概念を規定した上で、実際の課税標準としては「財産評価基準通達」によることになっている。

この通達では、評価の公平、簡便性、徴税費用等を勘案して土地の所在する地域により、路線価方式地域と固定資産税評価額倍率方式地域とに区分適用している。

  • 路線価は、おおむね宅地価額が同一水準と認められる一連の宅地が面している路線(道路)に価格を設定する。それは公示価価格、取引事例価格等を基として国税局長が決定する。
  • 倍率方式は、地域別に相続税評価額は、当該土地の固定資産税評価額の何倍と定める方法である。農地、山林、原路等に適している。

次上の過程により相続税の課税価格は、正常価格概念に立脚しつつも現実に路線価等として決定された“ある価格”によることになる。その実際的なレベル、価格水準としては、公示価格等の正常価格に対し、現在はほぼ80%に調整されている。といわれる。

また、倍率方式の基となる固定資産税評価額は現在、約70%に調整されているといわれている。 相続税(贈与税も同じ)法上は、次上の路線価が原則であるが例外として鑑定評価による時価が採用される場合がある。 実際の時価が路線価よりも著しく低い場合である。

それは一般的には、

  • 画地条件にマイナス要因があるもの
    • 広大地:開発許可を要する一定面積以上の広大地で一定の要件に合致する土地、マンション用地等。
    • 前面道路が2m未満の土地
    • 開口の狭い土地
    • 傾斜地、崖地、高低差のある土地
    • 市街地農地、市街地山林、市街地原野
    • 不整形地、市街化調整区域内宅地等
    • その他
  • 収益性が低いため鑑定評価額を活用できるケース
    • 傍家人付物件
    • 傍地、底地
    • 商業ビル
    • マンション等

であるが、この様なケースにおいては鑑定評価の活用により、路線価方式の画一性による過大な評価を俳し、適正な納税の推進に寄与することとなる。
路線価システムは基本的に30〜60坪程度の標準画地を標準としているため、広大な土地等は、それになじまない傾向があるからである。こうしてこれら例外的なケースにおいては、本来の原則的な時価、正常価格である鑑定評価額が主役に躍り出ることとなる。
ということに行政上の画一性と真実の時価との交差が現われてまことに注目に値する。
大いに鑑定評価の活用をすすめる所であります。

次回予告:つづき