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固定資産税と時価

6.固定資産税と時価

固定資産税の課税の基礎となる固定資産税評価額ほど全国津々浦々に行き渡っているものはない。市町村のある所には全て、この網がかぶさっているからであり、市町村の収入は全て固定資産が大半をまかなっているからである。

では何故、土地なり建物なりを所有すると税を負担せねばならないか。いわく「その所有価格に応じて行政サービスを受けるからであり、また納税力(担税力)があるからである。」と。しかし、よく考えてみるとわからない。昔から地租として今でいう固定資産税を負担していたことは連綿たる史実である。その根拠は、地域の防衛費、安全保障の見返りという名分が立ったものと考えられる。物件の広さ、大きさに応じて徴収されることも警備費用としてならば納得がゆくからである。

さて、時価とのかかわりであるが、その課税価格は適正な時価であるとしている。まことに当然の如くであるが、具体的には「固定資産課税台帳に登録された価格」となる。それはまた「固定資産評価基準」により評価された価格であるとしている。それがいわゆる「固定資産税評価額」である。

ここで注意して欲しいのは適正な時価のはずが、いつの間にか行政上の評価要領、評価水準 によって人為的に画一的手法により評価された“ある数値”に変貌してしまっていることである。この数値を基準として課税標準が決定されるのであるから、これは行政上、徴税上の手段であり用具である。ただ、実際上、全国土にわたり、くまなく鑑定評価を行ってその網の目を張りめぐらすことは出来ない相談であるから、まことに止むを得ない次書の策ではある。我々の目下のテーマから見えて来たことは、これは土地の時価、いわゆる適正な市場価格、交換価格で全くなくて、単なる課税上の目安とすべきある数値である。かくてこの小稿の初めに記した“一物回価”のうち一価としての位置からは外し、今後価値論の対象とはしないことが適当である。

以上の様に建前上は“適正な時価”と実際上は「ある数値上である固定資産税評価額との二本建てとなっているので、後者が前者を上回ってしまった場合は違法となる、との最高裁判例があるので納税者の主張の道は開かれている。これはバブルとその崩壊に伴って都内各地で起こされた住民側の不服申し立てがその前例を提供している。

同じく市町村の課する都市計画税の課税標もこの固定資産税の課税標準と同一である。これは都市計画事業又は土地区画整理事業を行う市町村がその費用に当てるために都市計画区域内に所在する土地及び建物に対して課税するものである。これは応益原則の趣旨がより明瞭である。

最後に夢かも知れないが、民営化である。先程、全国に鑑定評価の網の目は現実的でないといったが、評価決定機構の民営化という目で再検討すれば、膨大な行政コストを半減するかもしれない。現在、総務省、各市町村の評価担当組織の莫大な人件費他のコストを調べた資料はあるのか不明だが、恐らく民営化によって財政難、税収不足を補ってはるかに余りある効果を上げるものと期待できよう。

次回予告:会社更生と時価