(3)みなし譲渡
下記の場合は時価による譲渡があったものとして課税される。
- 法人に対する贈与
- 相続(限定承認に係るもの)
- 遺贈(法人に対するもの及び他人に対する包括贈与のうち限定承認に係るもの)
- 法人に対する低額譲渡
なお低額譲渡の低額とは時価の2分の1未満の金額とされている。2分の1をこえれば個人に対するみなし譲渡は適用されないが、これはあくまで個人からみた譲渡課税の問題であり、法人については時価との差額が受贈益課税される。またその買主である法人が同族会社の場合、同族会社の行為又は計算の否認規定によって否認され、時価による課税を適用される場合があり得るので注意が必要である。
(4)現物出資
土地を現物出資した時は出資金額ではなく時価で評価されるので注意が必要である。
この場合、出資財産の価額が相当であることにつき、弁護士、公認会計士等の証明が必要であり、不動産の現物出資についてはこの他に不動産鑑定士の鑑定評価が必要になる。
(5)土地建物を一括購入した場合の取得価額の按分
土地と建物の時価で評価計上する。
通常、仲介業者が関与していて建物部分につき消費税額が表示されているので、それを基に建物価額を把握して区分すれば良い。
なお、不動産鑑定士から鑑定評価あるいは意見価額を求めて決定することができる。また簡便法としては近隣地域の公示価格に路線価による修正、時点修正を加味した価格をもって評価することができる。たいしこれは一般的に弊害のない場合であり個別案件によって適用できない場合も考えられよう。
(6)借地権について
借地権を設定して土地の権利を売って権利金を受領したときは、譲渡所得として課税される。問題はこの正常な権利金を授受しない場合の取り扱いである。
- 権利金を受領しなくても、相当な地代を払えばよい。
すなわち権利金は通常、土地の価額の 60%、70%〜90%等として地域により差はあるものの、巨額の譲渡益となるが、これに代えて相当な地代を払えば権利金の認定課税は行わないというものである。
その相当の地代とは、土地の更地価格に対して年6%程度の地代とされている。 - 権利金の認定課税
権利金を収受せず、かつ相当の地代も受領しない場合は権利金の認定課税が行われる。すなわち権利金相当額を借地人に贈与したものとされる。この場合、先述した様に相手が法人であれば、賃地人たる個人にもみなし譲渡の認定課税が適用され、個人、法人の二重課税が発生するので注意が必要である。 - 立ち退きの場合借地権
借地の返還の場合は、逆に相当の立退料の授受が必要となる。相当の立退料とは借地権の時価相当額である。 - 無償返還の届出 上記の認定課税を受けない為には、借地契約書上で、将来借地を無償で返却することが明記されていること、及びこの旨、税務署長宛て「無償返還の届出書」を提出することにより、認定課税が見合わされる。
次回予告:(その他税法における時価)
- 2009.10.13第一回 土地の市場価格
- 2009.10.19第二回 不動産鑑定評価における時価
- 2009.10.26第三回 企業会計における土地の時価
- 2009.11.02第四回 土地の売却可能価格他
- 2009.11.20第五回 各法律上の土地の時価各論
- 2009.12.03第六回 不動産を「固定資産」に。 不動産関連企業、振り替え相次ぐ。
- 2009.12.07第七回 会社法と土地の時価
- 2009.12.19第八回 M&Aと土地の時価.1
- 2010.01.21第九回 M&Aと土地の時価.2
- 2010.01.30第十回 固定資産税と時価
- 2010.02.02第十一回 会社更生と時価
- 2010.02.25第十二回 相続と時価.1
- 2010.04.11第十三回 相続と時価.2
- 2010.04.16第十四回 法人税法、所得税法における土地の時価.1
- 2010.04.22第十五回 法人税法、所得税法における土地の時価.2
- 2010.04.29第十六回 その他税法における時価
- 2010.05.09第十七回 地価総下落.1
- 2010.05.26第十八回 地価総下落.2
- 2010.05.26第十九回 地価まとめ
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