前回要約した市場価格について最も適正な時価としては、不動産鑑定士の鑑定評価による鑑定評価額がこれに相当するとされている。それではこの不動産鑑定評価における時価とは何か。
不動産鑑定評価基準によると、鑑定評価により求める価格は正常価格であるとされる。正常価格とは合理的な自由市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格とされている。具体的には市場の統制がなく、需要、供給が自由に作用しうる市場において、市場の事情に十分に通じた多数の売り手と買い手が存在する場合に成立すると認められる価格とされる。またこれは、具体的な通常の売買価格、取引価格、競売価格、公売価格等とは異なり交換価値としての市場価格といわれている。
この鑑定評価の評価手法としては
- 原価法(土地の場合、造成原価。この方式で求めた価格は積算価格という)
- 取引事例比較法(周辺の取引事例を比較考慮して求めた価格。比準価格という。)
- 収益還元法(当該土地を有効活用し又は賃貸したとして上がる収益から求める価格。収益価格という。)
の三方式がある。この三方式による価格を比較考量して評価額を決定する。こうして求められた価額を以て適正な交換価値とすることになる。これはこの評価を担当する不動産鑑定士の意見の表明という側面もあり、個人的主観に偏らない様に複数の鑑定士による評価額の調整一致を求める場合があり、また不動産鑑定評価に関する法律、不動産鑑定評価基準において厳密に遵守すべき規範、ルールが定められ、その品質管理、客観性が担保されている。
この不動産鑑定士による鑑定評価は地価公示(公示価格、都道府県の基準地価格)、固定資産税評価額、相続税路線価、収用等における補償等の公的評価において用いられ、また裁判等にも広く活用されている。公的評価のうち、地価公示を除くと、それぞれの法的規制、行政制度上の基準があり、不動産鑑定評価額をベースにして具体的な価格付けは各独自の方式でなされる。公的評価等の各論については追って順次記述します。
次回予告;2.企業会計上の土地の時価(企業の決算に与える影響)。
減損、遊休土地、販売用土地の評価とは?
- 2009.10.13第一回 土地の市場価格
- 2009.10.19第二回 不動産鑑定評価における時価
- 2009.10.26第三回 企業会計における土地の時価
- 2009.11.02第四回 土地の売却可能価格他
- 2009.11.20第五回 各法律上の土地の時価各論
- 2009.12.03第六回 不動産を「固定資産」に。 不動産関連企業、振り替え相次ぐ。
- 2009.12.07第七回 会社法と土地の時価
- 2009.12.19第八回 M&Aと土地の時価.1
- 2010.01.21第九回 M&Aと土地の時価.2
- 2010.01.30第十回 固定資産税と時価
- 2010.02.02第十一回 会社更生と時価
- 2010.02.25第十二回 相続と時価.1
- 2010.04.11第十三回 相続と時価.2
- 2010.04.16第十四回 法人税法、所得税法における土地の時価.1
- 2010.04.22第十五回 法人税法、所得税法における土地の時価.2
- 2010.04.29第十六回 その他税法における時価
- 2010.05.09第十七回 地価総下落.1
- 2010.05.26第十八回 地価総下落.2
- 2010.05.26第十九回 地価まとめ
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