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土地の売却可能価格他

前回述べた減損における土地の時価とは正味売却価格をいう。すなわち、その時の売却可能価格から売却に要する費用を控除した価格である。

以上述べた減損会計は含み損のある土地に損失計上を迫り、企業の財政状態の実態を明らかにする。現在、不況により各業種にわたって支店、工場等の閉鎖、撤退が相次いで居るがその影響はいかなるものであろうか。まず、

  • 回収すべきキャッシュフローがなくなる
  • 工場等の解体撤去費用すなわち、膨大なマイナスキャッシュフローの発生
  • 工場等にあっては土壌汚染物質の処理コストの発生等が考えられ、全て売却可能価格を押し上げるので、巨額の減損損失計上を余儀なくされるであろう。この点、今後の事業再編等に当り慎重な事前評価が必要である。
    土地の多いゼネコン、不動産会社等はこの減損会計を早くから経過して居るが、製造業、流通業等はこれから荒波をうけるのではないかと思われる。
    事例としては
    • 某ゼネコンは賃貸用不動産に対しては評価減を行い、1,004億円を特別損失に計上した。
    • 某不動産会社はバブル期に取得した千葉県のゴルフコースについて含み損処理を行い、合計649億を特別損失に計上した。

(2)遊休土地の評価
遊休土地は一般的に言って、キャッシュフローがないので、直ちに時価との比較となり、時価が帳簿価格を下回れば減損となる。
この時価は正味売却可能価格である。

(事例)
某不動産会社はバブル期に購入した未開発の事業用地について、帳簿価格1,100億円の土地を時価200億円で評価して900億円の評価損を計上している。

(3)販売用不動産
分譲用地、建売用宅地、マンション等は販売用不動産として、たな卸資産に区分される。たな卸資産については低価主義が適用される。すなわち時価が帳簿価格を下回れば時価で評価する。この時価は先述末の正味販売可能価格である。
今年に入って、公示価格等の下落、不動産証券化市場の破綻等が相次いで、土地相場の異変を示している。この影響は市場に作用し、販売用不動産の評価減が顕著化するであろうと考えられる。

(4)実務上の時価
次上述べた時価は実務上どうして測定するか。いわゆる販売可能価格といっても抽象的で困惑する。
そこで実務上は

  • 鑑定評価額
  • 公示価格から比較した価格
  • 路線面(相続税評価額)
  • 固定資産税評価額
  • 近隣の取引事例価額
等の合理的な評価方式を用いて算定した価格によることとされている。

(5)法人税法上の取り扱い
法人税法は原則として資産の評価損益を認めない。すなわち、取得原価主義である。売却損益等として損益が実現した時点で損金、益金算入することとなる。従って上記のうち減損損失(遊休地を含む)については申告上自己否認して税務調整することが必要となる。販売用不動産については、法人税法もたな卸資産の低価法を認めているので、その評価額は損金算入となる。

次回予告;各法律上の土地の時価各論